M&Aを成功に導くトップ面談とは?目的や心得も解説
ノンネームシート・企業概要書の提示により買い手企業が関心を示した場合、トップ面談を実施します。トップ面談とは、M&Aを検討する企業の経営者同士が面談を行う場のことです。経営者同士・企業同士の相性確認が目的となります。経営者同士の直接的な話し合いだけではなく、事務所や工場などを視察するケースもあります。本記事では、トップ面談の目的と心得について解説します。
トップ面談の目的とは?
1.経営者の人間性、経営理念等を確認する
トップ面談において最も重要な目的は、相手の経営者の人間性・経営理念などを確かめることです。どのような想いで創業したのか、目指すべき企業の姿など、経営者の人となりを伝えることで、M&A後のイメージがつきやすくなり、売り手企業の経営者にとっては「自分が育ててきた会社を託すことができる」、買い手企業の経営者に「多少のリスクを取ってでも引き継ぎたい」と思ってもらえる可能性が高まります。
トップ面談は、あくまでも経営者同士が「交流」するための場であり、M&A取引に関する「条件交渉」を行う場ではないことを理解しておく必要があります。
2.売り手企業(譲渡側)が買い手企業(譲受側)を理解する場
買い手企業は企業概要書などにより売り手企業の事業内容や業績を把握することが可能ですが、売り手企業にとっては買い手候補企業を十分に知りえる情報源がないのが一般的です。そのため、事前に買い手企業のコーポレートサイトなどで情報収集を行った上で、企業概要や事業内容に関する疑問点をトップ面談で解消しましょう。
また、売り手企業にとって買い手候補企業が自社のどの部分に関心を持ち、魅力に感じているのか、M&A後のビジョンを直接経営者から確認できる場となります。
3.買い手企業(譲受側)の自己アピールの場
買い手企業にとっては、トップ面談で売り手企業に安心してM&Aを進めてもらえるようアピールする場でもあります。トップ面談の段階では契約には及んでおらず、また複数の買い手候補がいると考える必要があります。
売り手企業の経営者は譲渡金額等の経済条件以外にも、M&A後における自社の従業員の待遇や、取引先との継続取引等を心配していることが殆どです。そのため、買い手企業は紙面上のやり取りでは伝わりにくい、M&Aに対する想いや経営方針、その後のビジョン等について誠実に伝えることで自己アピールしましょう。
売り手企業におけるトップ面談の心得
1.条件交渉は避ける
トップ面談はお互いの人間性や経営理念などを深く知ることにより、信頼関係を構築することが重要視されます。それにもかかわらず、結論を急ぎ、希望売却価格や売却時期などの具体的な条件交渉を持ち出してしまうと、相手からの不信感を招く可能性が高くなります。
とりわけ、売り手企業が業績不振である場合は、売却時期は死活問題となり得るため、早期に売却したいと考えるのは当然ですが、その場合でもトップ面談では具体的な交渉は避けましょう。
2.買い手候補企業の情報を事前に収集する
仲介会社などのM&Aアドバイザリーから買い手候補企業を紹介された場合には、事前に買い手候補企業の会社概要や事業内容を買い手候補企業のコーポレートサイトなどで情報収集してから、トップ面談に臨む必要があります。
稀に「会ってみなければわからない」という理由で、会社名しか把握していない状態でトップ面談に臨む経営者がおられますが、そのような状態で信頼関係を構築することは困難です。M&Aは企業同士の取引ですが、トップ面談は経営者という「一人の人間」としての交流の場です。相手側に自社に興味を持っていることが伝われば、それだけで相手に好印象を与えることになります。興味を持ってくれている相手に対して、悪い感情を持つ人はあまりいないはずです。
3.従業員への配慮も重要
トップ面談を行う場所については、売手側企業の事務室・応接室などで行うと、従業員または、M&Aに関わっていない役員などに気づかれるおそれがあります。この場合、買い手候補側企業、M&Aアドバイザーなどのオフィスなどで行うほうが知られるリスクをおさえられます。
また、工場や店舗のある企業であれば、工場見学や店舗見学をトップ面談と併せて行うこともあります。この場合の注意点としては、工場や店舗の従業員には、M&Aのための見学であることを気づかれないようにすることです。仮に従業員に案内を依頼する場合は、「新規見込取引先の視察」などと別の理由を伝えておくことを推奨します。また、現場で混乱が起きないように買い手企業側にも共有しておく必要があります。
買い手企業におけるトップ面談の心得
1.リスペクトを持った対応を心掛ける
先述した通り、トップ面談は経営者同士の信頼関係を構築することが目的のため、お互いに信頼を得られるような対応を心掛ける必要があります。買い手企業における失敗談として、買い手という立場が売り手よりも偉いと勘違いをして、高圧的な態度を取ってしまい、破談となってしまうケースがあります。
M&Aには多くのリスクが付いて回るため、可能な限りリスクを少なくしたいという気持ちは当然ですが、必要以上に売り手企業を疑ってしまうと、その気持ちがすぐに伝わります。また、売り手企業のマイナスポイントを正直に話しているときに、それを指摘するような態度をとると、売り手企業からすれば非常に不愉快です。仮にマイナスポイントが許容できない水準であっても、トップ面談ではリスペクトを持った対応を心掛けるようにしましょう。
2.伝えるべき情報の整理をしておく
売り手企業の経営者はM&A後の自社の従業員の雇用や処遇、事業の将来など多くの不安を抱えています。そのため、トップ面談ではほぼ確実にM&A後のビジョンについて質問されます。不安を解消するために、主に次のような情報を整理しておきましょう。
・過去に行ったM&Aの実績
・経営戦略としてのM&Aの軸
・M&A後の統合作業(PMI)の方針
・企業全体の今後の方向性
・買収後に譲受企業をどのように運営していくのか
・M&Aによってどのようなシナジーを見込んでいるのか
おわりに
トップ面談はよくお見合いに例えられますが、最初のトップ面談は「お付き合いをして、結婚まで進むかもしれない相手との出会い」です。お見合いが失敗してしまうと、結婚に至ることはほとんどないでしょう。そのため、M&A成約という結婚に向けて、まずは誠実に対応することで相手に信頼に足る人物であることをアピールするとともに、自らも信頼できる相手であるかをしっかりと見極めるようにしましょう。
弊社では、トップ面談のサポートについても万全な体制が整っておりますので、是非お気軽にお問い合わせください。