M&Aは誰に相談すべき?専門家を選ぶときのポイントを解説

M&Aを検討し始めたものの、何から始めれば良いかわからないという方は多いのではないでしょうか。事業規模拡大、財務面の課題解決、事業承継問題解決等の策として、M&Aの検討が中小企業の間でも急速に広まっています。一方で、M&Aはさまざまな分野の高い専門性や知識が必要とされるため、M&Aを実行する上では専門家が必要となってきます。本記事では、M&Aの専門家を含む相談先をご紹介した上で、専門家を選定ポイントについて解説していきます。

M&Aの相談先一覧

1.税理士・会計士

中小企業の経営者にとっては、日頃よりお世話になっているため、一番身近な存在であり、真っ先に思いつく相談先ではないでしょうか。実際に、中小企業庁が公表している「中小企業白書」ではM&Aの相談先として、顧問の会計士・税理士が最も多く、40%程度を占めているというアンケート結果が出ています。顧問税理士・会計士は財務状況をよく知っており、ビジネス上の課題も把握している点では、相談先として一番良いと思いますが、彼らは財務・税務の専門家でも、M&Aについては専門家ではないケースがあることを理解しておく必要があります。中には、デューデリジェンスを中心にM&A支援の経験がある税理士・会計士もいますが、M&Aを専業にしている仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)と比べてしまうと、相対的に経験値が不足していることが多いです。
そのため、まずは顧問税理士・会計士に相談するところから始めて、具体的にM&Aを進める際には後述する専門家を利用することをおすすめします。

2. M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、売り手と買い手の間に入って仲介する会社を指し、両者(売り手・買い手)に対して公正な立場を取り、M&Aのマッチングから実行支援までを行っています。潜在的な売り手候補・買い手候補を多数ストックしているため、マッチング力は非常に高いといえます。
そのため、今すぐにでも会社を売却したいという売り手にとっては最善の選択肢となり得ます。ただし、着手金が必要で、かつ成功報酬が高額となりやすいため、中小企業の中でも規模の小さい会社は手数料の負担が大きくなる可能性があります。
また、大手の場合は会社全体としての専門性は高いものの、社員数が多いことから、担当者の経験にバラつきが多く、経験豊富なM&Aアドバイザーが担当となるとは限りません。そのため、担当者が経験豊富なM&Aアドバイザーであるかを見極める必要があります。

3. ファイナンシャルアドバイザー(FA)

M&Aにおけるファイナンシャルアドバイザー(Financial Advisor、以下「FA」といいます。)とは、M&Aの計画から交渉、スキーム立案、クロージングまで幅広くアドバイスを行い、M&A全体を支援する者を指します。仲介会社と大きく異なる点としては、FAは必ず売り手または買い手のどちらか一方につき、顧客の利益最大化を目指します。FAは専門性の高いM&A、大企業同士のM&A、海外企業とのクロスボーダーM&A等において利用されることが多いため、中小企業のM&Aでは利用されることは少ないのが現状です。
しかし、最近は証券会社の投資銀行部門、会計事務所系コンサルでFAを経験してきたアドバイザーが個人で独立して、中小企業のM&A支援に取り組むケースが増えています。これは、中小企業の間でM&Aが急速に広まっていることに加えて、仲介会社は売り手と買い手に対する利益相反が指摘されているため、どちらか一方の利益最大化を目指すFAへのニーズが高まっていることがうかがえます。
そのため、事前準備から実行までのM&A全体プロセスのサポートをお願いしたい場合は、FAに相談してみることをおすすめします。

4. 大手金融機関

大手の金融機関はM&Aの専門部署を設置していますが、FAと同様に上場企業同士のM&Aや海外企業のクロスボーダーM&A等の大規模なM&Aに特化しているため、中小企業のM&Aを支援することは少ないといえます。最近では、中小企業のM&A支援にも取り組むことを掲げている大手金融機関もありますが、実態は提携している仲介会社やFAに委託していることが現状のようです。

5. 地方金融機関

2000年代はM&Aの支援に取り組み地方金融機関は限られていましたが、金融庁からの指導により、2010年代以降は多くの地方金融機関がM&Aの支援を行っています。地方金融機関は地場の中小企業との繋がりが深いため、本店のある都道府県の近隣エリア内で売り手候補・買い手候補を探す場合は仲介会社よりも素早い対応が見込めます。一方で、エリア外を含めた候補を探す場合は地方金融機関では対応しきれない可能性があります。また、定期的な部署異動を行う金融機関の特性上、経験豊富なアドバイザーを長期的に配置することができない事情もあるため、M&Aを実行する上では別の専門家を利用する必要があります。

M&Aにおける専門家の重要性

1. M&Aの交渉を円滑・迅速に進めやすい

多くの経営者にとって、M&Aは人生に一度経験するかしないかの取引であり、重要なターニングポイントになります。M&Aを円滑かつ迅速に進めるためには、M&Aの一般的な慣習や交渉の経験、会計・税務・法務・ファイナンス等に関する幅広い知識を有するアドバイザリーを利用することは大きなメリットがあります。そのため、候補先の選定・アプローチを目的として利用するのみならず、M&Aプロセス全体の効率的な進行や、第三者が関与することにより客観的に交渉を進めることができるため、仮に相手先がすでに決まっている場合であっても、FA(ファイナンシャルアドバイザー)等を利用することの意義が大いにあります。

2. 不利な条件下での契約締結を回避しやすい

中小企業のM&Aにおいて、ほとんどの売り手は初めてのM&Aであるのに対して、買い手側は何度も買収を繰り返している、いわゆるストロングバイヤーの可能性があります。その場合、相対で交渉を進めてしまうと買い手側に完全に主導権を握られてしまい、売り手不利の契約条件となることがあります。適正な企業価値を反映していない譲渡対価となる、クロージング実行の前提条件が厳しく定められその結果クロージングができないということもあります。
例えば、以下のような条件については注意しなければなりません。
・価格調整条項、アーンアウト条項
・実行の前提条件
・競業避止義務
・表明保証
・損害賠償
いずれも、M&Aに精通した専門家でなければ正確に理解することが難しいため、専門家に契約書のレビューを依頼することで、不利な条件を回避することが可能となります。

M&Aの専門家を選定ポイント

M&Aの専門家を選ぶときに次のようなポイントに気を付ける必要があります。ただし、最も重要なのが一緒にM&Aを進める専門家を信頼できるかどうかになります。M&A取引の成否は、担当する専門家の能力による部分が大きく、経験豊富で信頼できる専門家に任せることがM&Aを成功させる上で重要なポイントになります。

1. M&A成約までの費用感

各社によって着手金・中間報酬・成功報酬等、報酬が発生するタイミングがさまざまです。着手金が無料であっても、M&A成約までの全体の費用が高額になる可能性があります。そのため、M&A成約までの全体の費用感を事前に把握しておき、その費用感が自社の会社規模、または提供されるサービスに適しているか注意する必要があります。基本的には複数の専門家にお問い合わせを行い、費用の比較検討を行うことをおすすめします。

また、多くの仲介会社・FAで採用されているレーマン方式(取引金額に応じて報酬料率が変動する仕組み)自体は一般的な報酬体系ですが、算出の基準となる取引金額は「移動総資産(株式価格+負債総額)」や「企業価値(株式価格+有利子負債)」という場合もあれば、「株式譲渡対価」を使用する場合もあるため、こちらも事前に確認しておく必要があります。

2. M&Aプロセスのサポート範囲

前述した通り、M&Aはさまざまな分野の高い専門性を必要とするため、一部の分野のみ特化した専門家を利用した場合には、他の専門家を利用するなどの対応を取らなければいけません。複数の専門家を利用した場合には、トータルコストが高額になることに加えて、余分なコミュニケーションコストが発生することになりかねないため、M&Aプロセス全体を支援できる一つの専門家を利用することをおすすめします。

3. M&Aにおける実績はどうか

M&Aにおける会社としての実績、そして担当者としての実績を事前に確認しておく必要があります。専門家によってはある業界に特化していることもあるため、自社が属している業界での実績についても重要な判断材料となります。

4. M&A成立後のサポートはあるか

M&Aが成立するとすべて終わりと思いがちですが、M&A成立後のPMI(M&A後の統合プロセス)なしに、M&Aの成功はあり得ません。買い手にとっては、業務フローから組織風土まで何から何まで異なる組織を一つの会社として経営していくのは、相当な労力が必要となります。とりわけ、買い手が利用する専門家においては、M&A成立後のサポートを受けることができるかについても留意する必要があります。

おわりに

今回は、M&Aの主な相談先および専門家の選定ポイントについて解説しました。中小企業の経営者にとって、M&Aは人生の最も大きなイベントの一つになるため、複数の専門家に相談した上で、M&A実行まで一緒に走り切れる信頼に足る専門家を見つけてください。
弊社は、M&A専門家の中のFAに属します。大手会計事務所・M&Aアドバイザリー会社出身者に加えて、事業会社にて自らM&Aを推進してきたメンバーが揃っているため、M&Aに関するアドバイスから実行まで、経営者に寄り添ったサポートが行えます。是非、M&Aを検討している方は、お気軽にお問い合わせください。

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