M&Aに向けた事前準備や必要期間を解説!(売り手編)

中小企業における事業承継をはじめとした経営課題の解決方法の1つとして、会社または事業の売却(以下「会社売却」といいます。)という選択肢があります。会社売却が未経験の中小企業にとっては、どこから手を付けて良いかわからず不安なものです。会社売却を成功に導くためには、売り手として十分な準備が必要となります。本記事では、会社売却に必要な準備及び準備期間について解説していきます。

会社売却の準備

1.会社売却の目的及び意義を整理する

会社売却プロセスを進めていくにあたって、売却の目的及び意義を整理することが重要です。
一般的に、準備開始から売却に至るまで半年から1.5年程度かかり、その間に多くの意思決定、従業員や取引先などに対する説明を行わなければなりません。
このため、「なぜ売却するのか?」「売却後の対象会社、従業員及び取引先の将来はどうなるか?」といった、売却の目的及び意義を整理することで、合理的な意思決定や対外的な説明を行うことができる可能性が高まります。

2.売却条件の洗い出し及び優先順位付けする

売却の目的及び意義を整理した後に、会社売却するにあたっての目標条件を設定しなければなりません。通常、売り手にとっては売却価格が最も重要な条件の場合が多いですが、売却価格以外の主な条件、例えば、次のような条件についても検討しておく必要があります。

  • 商号や屋号などのブランドの維持
  • 従業員の雇用及び処遇の維持
  • 取引先及び取引条件の維持
  • 売却までの時間軸
  • 売却後の対象会社の成長性

しかし、買い手が、売り手の希望する条件をすべて受け入れてくれるとも限らないため、売却条件に明確な優先順位を設定することが重要です。

3.会社売却のタイミングを検討する

同じ企業価値の会社であっても、会社売却のタイミングによって、売却価格が異なる場合があります。会社売却の最適なタイミングは、個別事情により大きく左右されるため、画一的に判断することは難しいです。このため、次のような項目を考慮しながら、総合的に判断する必要があります。

  • (内部環境)経営者のご意向及び状況
  • (内部環境)自社の業績推移
  • (外部環境)株式市況を含む景気動向

4.企業価値の向上施策を検討・実行する

当然のことながら、企業価値を向上させることで、高い売却価格にて会社売却することができます。このため、会社売却の準備段階で、しっかりと企業価値を向上させることが重要になります。
企業価値を向上させる施策として、主に①事業の収益力の向上、②投下資本の効率化、③財務の最適化の3つの視点があります。
短期間ですべての施策に取り組むことは困難なため、会社売却を決断した後、できる限り早い段階からM&Aアドバイザーのサポートを受けながら検討するとよいでしょう。

5.会社売却のスキームを検討する

会社売却というと、一般的に株式譲渡をイメージしますが、株式譲渡以外にも会社分割、合併、事業譲渡などさまざまなスキームがあります。
会社売却において、売り手・買い手はもちろん、対象会社の役職員、取引先及び金融機関などの多くの利害関係者に重要な影響を与えることになるため、会社売却の準備段階でどのスキームを選択するべきか検討することになります。
最適なスキームを選択するためには、法務、会計及び税務といった高度な専門知識が必要となるため、M&Aアドバイザーのサポートを受けながら検討するとよいでしょう。

会社売却の準備期間

会社売却の準備期間は、個別の状況による部分があるため一概には言えませんが、会社売却の成功確率を高めるためには、一般的には1~2年程度の準備期間が必要と言われています。
これに加えて、会社売却の準備が完了した後に、実際に会社売却の手続きを進めていく期間が半年から1年程度かかります。
このため、準備期間から会社売却の完了という意味では、1~3年程度かかるということを理解して、会社売却に取り組む必要があります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です